図書 『私たちの本📗』リニューアル!

SCN_0001-2 

トキワ松学園が発行する『私たちの本』が13年ぶりに改訂されました。『私たちの本』は生徒の皆さんに本に親しんでもらおうと先生たちが分担をして紹介文を書いたものです。(ちなみに、今回の改訂にあたって昨年の夏休みの先生たちの宿題でした。) 以下に一部をご紹介します。他にもたくさんの本が紹介されています。読書の際の道しるべとして利用し、自分がいつもは選ばないジャンルの本にも興味を持ってもらえたら嬉しいです。ぜひ、自分のお気に入りの一冊を探してくださいね。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

私のスポットライト』林真理子

中2『私のスポットライト』林真理子(ポプラ社)913-ハ
かわいくてスタイルも良い、いとこの美冬と比べて、主人公の彩希は、成績も顔も「ふつう」でクラスでも目立たない地味な女の子。そんな彩希が、ひょんなことから文化祭のクラス劇で主役を演じることになります。その舞台をきっかけに、彩希自身の性格や価値観がどのように変わっていくのでしょうか。人生で初めて「スポットライト」を浴びた彩希の喜びと感動を味わってみてください。 「頑張る子は目立つ。でもそれでいいんだ。頑張ることを馬鹿にする奴らを、彩希は笑ってやれ。」お父さんの言葉は彩希の心に強く響きます。彩希は次第に、なぜ自分は今まであんなに必死に「ふつうの子」になろうとしていたのか、自分にとって本当に大切なものとは何か、ということを意識しはじめます。ぜひ彩希といっしょに、「自分」について考えてみてください。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

きみ江さん片野田斉

中2『きみ江さん』片野田斉(偕成社)916-K
皆さんは「ハンセン病」という病気を聞いたことがありますか?これは聖書にも出てくる古い病気で、昔は不治の病と恐れられていました。特効薬が開発された後も人の心に染みついた患者さんへの偏見や恐怖はなかなか消えず、ひとたびその病気にかかれば、患者さんは家族と別れ、社会と隔絶した世界で生きることを余儀なくされました。信じられないことですが、患者さんは子供を持つことも許されず、本人の意思とは無関係に避妊手術を強制されたのです。そうした壮絶な差別の中、明るく前向きに何事にも挑戦し続けるきみ江さん。誰よりもつらい境遇であったろうに、東日本大震災の被災者の方々や社会で白い目を向けられている人々を思いやる彼女の生き方に、私たちは学ぶべきことがたくさんあるのではないでしょうか。差別を作り出すのは人間ですが、人を救うのも人間です。「誰もが人間らしく生きる社会」とは?と考えさせられる一冊です。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

フラダン

高一『フラダン』古内一絵(小峰書店)913-フ
映画「フラガール」の原作? と思った人もいるかもしれない。否、工業高校で水泳部を辞めた後、半ば強引に入部することになったフラダンス同好会で、二年生の辻本穣(ゆたか)がやがて真剣にフラダンス甲子園に挑戦するようになるという話だ。 笑いや甘酸っぱい青春を描いている一方で、もう一つの主題は東日本大震災五年後の福島というところにある。原発事故をさまざまな形で背負って生きているのは大人ばかりではない。教室の中でも日々互いにようすを窺いながら、言葉を選び時には飲み込み、自分や周囲と向き合う生徒たちの内面や成長していく姿が浮き彫りにされる。自分だったらどうするだろうかと、登場人物一人ひとりの心に寄り添いながら読んでほしい一冊だ。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

エベレストファイル

高一『エベレスト・ファイル』マッド・ディキンソン(小学館)933-D
人生を変えてしまう山、エベレスト。世界中の登山家たちが登頂を目指す世界最高峰の山。その登山には、豊富な資金と大量の機材が必要となるが、その登頂の成否を分けるのは荷運びをする経験豊富で鍛え抜かれたネパールのシェルパたち。貧しいシェルパの人々にとって登山は貧しさから抜け出す重要な収入源であるが、それは、想像を絶する重労働であり、時には命を失うことになる危険な仕事でもある。アメリカ大統領になるためにエベレスト登頂という「名声」を手に入れようとする上院議員と、その議員から無理難題を強要される少年シェルパ。その二人の関係を中心に、自身もエベレスト登頂に成功している作者が、美しくも厳しい自然に立ち向かう人々のようすを、迫力満点に描いた作品である。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

野川

高二『野川』長野まゆみ(河出文庫)913-ナ
中学二年生の夏休み、突然両親の離婚で転校することになった音和。新しい学校で、国語教師かつ新聞部顧問の河合先生と出会う。「意識を変えろ。ルールが変わったんだ。」河合先生の数々の言葉に音和は心を揺さぶられてゆく。先生との駆け引きで、音和は新聞部の部長としてなぜか鳩を飼うことになり…。 河合先生との問答を始め、先輩の吉岡や部員達との関わりによって、どのように音和が成長していくのかを視点に読むと良い。また、所々に表現されている繊細な風景描写にもぜひ注目して欲しい。「きみたちにつかんでほしいのは、意識のなかでの風景のつくりかたなんだ。ことばから連想できるものだけで思い描くことが大事なんだよ。」 なぜ本を読むのか。なぜ数学を学ぶのか。なぜ年長者の話を聞くのか。日常の素朴な疑問を静かに解き明かしてくれる珠玉の一冊。